アクリルゴム(ACM)の耐熱性と特徴を徹底解説|自動車部品で注目される理由

アクリルゴム(ACM)の耐熱性と特徴を徹底解説|自動車部品で注目される理由と最新動向

アクリルゴム(ACM)は、耐熱性と耐油性を兼ね備えた合成ゴムであり、自動車産業を中心に欠かせない存在です。特に150℃以上の高温環境においても物性を維持できるため、エンジンルーム周辺部品で広く使用されています。本記事ではACMの特徴、耐熱性の根拠、用途、他のゴムとの比較に加え、最新の研究開発動向まで詳しく解説します。

目次

アクリルゴム(ACM)の基本概要

アクリルゴムはアクリル酸エステルを主成分とする合成ゴムで、1940年代に米国で初めて工業化されました。その後、自動車用オイルシール材として普及が進み、1970年代には日本国内でも本格的に採用が始まりました。

ACMは主に次のような特徴を持ちます:

  • 耐熱性:150〜170℃の高温下でも性能維持
  • 耐油性:エンジンオイルやATFへの高い耐性
  • 耐薬品性:酸やアルカリには中程度
  • コスト面:フッ素ゴムより安価で、NBRより高機能

ACMの耐熱性の仕組み

アクリルゴムの耐熱性は、分子構造に由来します。ACMは飽和側鎖を持つため、二重結合に起因する酸化劣化が起こりにくいのです。その結果、高温でも分子鎖が安定し、物性が維持されます。

また、熱老化試験では以下のような結果が得られています:

試験条件 保持時間 硬度変化 引張強さ変化
150℃空気中 72時間 +3 -10%
170℃空気中 72時間 +6 -18%

自動車産業におけるACMの活用

ACMは自動車産業で特に需要が高く、以下のような部品に使用されています。

  • エンジンオイルシール
  • トランスミッションガスケット
  • 燃料系ホース
  • エンジンマウント用防振材

具体的には、国内外の主要自動車メーカーでエンジンルームの90%以上にACM部品が採用されていると報告されています(参考: 自動車技術会 年次報告)。

他のゴムとの比較

ゴム材料の選定では「コスト」「耐熱性」「耐油性」のバランスが重要です。以下は代表的なゴムとの比較です。

ゴム材料 耐熱性 耐油性 コスト 主な用途
ACM 150〜170℃ 非常に良好 自動車部品
NBR 120℃前後 良好 燃料ホース
FKM 200℃以上 極めて良好 航空機・化学プラント
EPDM 150℃程度 不良 耐候部材

メリットと課題

メリット

  • 耐熱・耐油の両立
  • 自動車向けで広い採用実績
  • 加工性が良く量産に向く

課題

  • 低温特性が劣る(-20℃以下で硬化しやすい)
  • 耐候性が弱い(屋外用途では注意が必要)
  • 燃料油に対する耐性が低い

今後の研究開発と展望

近年、アクリルゴムは環境対応やカーボンニュートラルの観点から研究が進んでいます。具体的には以下のような開発動向があります。

  • バイオベースACM:再生可能資源から得られるモノマーを使用
  • 低温特性改良:共重合比率を調整し、低温柔軟性を向上
  • リサイクル技術:廃棄ACMの再利用プロセスの確立

よくある質問(FAQ)

Q1. アクリルゴム(ACM)は何℃まで使用できますか?
標準的なアクリルゴムは約150℃まで対応可能で、一部の高耐熱グレードでは170℃前後まで安定して使用できます。用途に応じた耐熱性比較については主要ゴム材料の比較ガイドで詳しく解説しています。規格上の性能値はJIS規格を参照するのが有効です。

Q2. ACMは燃料ホースに適していますか?
ACMは耐油性には優れていますが、ガソリンや燃料油に対する耐性は低いため、燃料ホース用途には不向きです。代替材料としてはフッ素ゴム(FKM)がよく使われます。

Q3. ACMは屋外用途でも使用できますか?
ACMは耐候性が弱いため、長期間の屋外用途には適しません。屋外部材にはEPDMが推奨されます

Q4. 今後のACMの改良や研究開発はどのような点ですか?
低温柔軟性の改善や、環境対応型のバイオベースACMの研究が進められています。リサイクル技術の開発も重要なテーマです。

まとめ

アクリルゴム(ACM)は、自動車産業を中心に幅広く利用される耐熱・耐油性に優れた中価格帯ゴム材料です。低温特性や耐候性に課題はあるものの、コストと性能のバランスに優れるため今後も需要は高まると予測されます。

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