ゴムは油で溶けるのか?耐油性と材質選定の完全ガイド

ゴムは油で溶けるのか?耐油性と材質選定の完全ガイド

機械部品やパッキン、ホースなど、日常的に油や溶剤に接するゴム製品。使用中に「ゴムは油に溶けるのか?」と疑問を持つ方は少なくありません。油に弱いゴムを選んでしまうと、膨潤、亀裂、漏れなどの不具合が発生し、機械の故障やコスト増につながる可能性があります。本記事では、ゴムの種類ごとの耐油性や溶解メカニズム、選定・加工の注意点を徹底解説し、失敗しないための実務的な知識を提供します。

目次

ゴムと油の化学的な関係

ゴムは一般に非極性分子構造を持つため、同じく非極性の油(鉱物油や炭化水素系オイル)とは分子間で親和性があります。このため、ゴムが油に接触すると、ゴム内部の分子鎖が膨潤したり、可塑剤や添加剤が溶出する現象が起きます。これを「膨潤」と呼びます。膨潤率が高いほど、寸法変化や硬度低下が顕著になり、シール性能や耐久性に影響します。

例えば、NBR(ニトリルゴム)は炭化水素系オイルに強く、耐油性が高いのに対し、EPDMは非極性油には弱く、膨潤や溶解のリスクが高くなります。詳細な膨潤メカニズムやゴム分子の構造変化に関しては、ゴムの油による膨潤・溶解メカニズムに関して解説で詳しく紹介しています。

ゴムの種類別 耐油性比較

ゴム種類 耐油性 耐温度 特徴
NBR(ニトリルゴム) -40〜120℃ 鉱物油や油圧油に強く、ホース・パッキンに最適
EPDM -50〜150℃ 極性油や酸・アルカリには耐性があるが、炭化水素系油には弱い
SBR(スチレンブタジエンゴム) -40〜100℃ 一般的な汎用ゴム。油接触には不向き
FKM(フッ素ゴム) 非常に高 -20〜250℃ 高温油、化学薬品にも強く、特殊用途向け
CR(クロロプレンゴム) -40〜120℃ 耐候性と耐オゾン性に優れるが、長時間油に接触すると膨潤

各ゴムの耐油性を把握することは、材料選定での失敗を防ぐ上で不可欠です。詳しい材質選定のポイントは材質選定のポイントに関して解説で詳しく確認できます。

油によるゴムの膨潤と性能低下の具体例

油に接触したゴムは、以下のような影響を受けることがあります:

  • 寸法変化:シール部品やOリングの膨張により、隙間や漏れが発生
  • 硬度低下:ゴム表面が軟化し、耐圧性能や耐摩耗性が低下
  • 添加剤の溶出:潤滑剤や可塑剤が油に溶出し、ゴムの物理特性が変化
  • 長期的な劣化:油との反応により亀裂や脆化が進行

例えば自動車の油圧システムでSBRのパッキンを使用すると、数ヶ月で漏れや膨潤が発生するケースがあります。耐油性データや試験方法については、物質・材料研究機構(NIMS)の公開資料も参考になります。

耐油性ゴムの選定ポイント

ゴムを油環境で使用する際には、以下のポイントを押さえる必要があります:

  1. 油の種類を確認:鉱物油、合成油、極性油などで耐性が異なる
  2. 使用温度と圧力条件を考慮:高温・高圧下で膨潤率が増加する場合がある
  3. ゴムの種類選定:NBR、FKM、CRなど、使用条件に応じた材質を選ぶ
  4. 膨潤試験や実機テスト:事前に試験を行うことで性能低下リスクを把握

加工時・保管時の注意点

油に触れる可能性がある環境では、ゴムの加工・保管にも注意が必要です:

  • 加工中のオイルやグリースの種類に注意する
  • 保管時は油分の付着を避け、乾燥した環境で保管する
  • 保護コーティングや表面処理で膨潤を抑制する
  • 長期保管では定期的にゴムの状態を点検する

ゴム油接触に関する実務的アドバイス

油によるゴム膨潤や性能低下を防ぐためには、以下の実務的対策が有効です:

  • 使用条件に合わせてNBRやFKMなど耐油性の高いゴムを選定
  • 必要に応じて表面コーティングや潤滑油の種類変更を検討
  • 定期的な点検・交換を行い、漏れや破損を未然に防ぐ
  • 設計段階で膨潤率を考慮し、余裕のある寸法で製品設計

よくある質問


ゴムの溶解性は油の種類とゴム材質に依存します。一般に非極性の鉱物油や炭化水素系オイルは、NBRやSBRなどのゴムと分子間で親和性があり膨潤や溶解を引き起こしやすくなります。


油によるゴムの膨潤や硬度低下を防ぐには、使用条件に適した耐油性ゴムを選定することが基本です。さらに、表面コーティングや潤滑油の種類変更、定期的な点検・交換を行うことで性能低下を最小化できます。


ゴムの材質選定では、接触する油の種類、使用温度・圧力条件、必要な耐久性を総合的に考慮する必要があります。鉱物油に強いNBR、特殊用途向けのFKMなど、用途に応じた材質選択が失敗防止の鍵です。

まとめ:ゴムと油の関係を正しく理解して信頼性の高い設計を

ゴムが油に溶けるかどうかは、材質、油の種類、温度・圧力条件など複合的要素に依存します。本記事では、溶解メカニズム、耐油性ゴムの種類、膨潤や性能低下のリスク、選定・加工の注意点を具体例とともに解説しました。これにより、パッキンやホース、シール部品設計における失敗を防ぎ、信頼性の高い製品を実現できます。

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