加水分解とは、水や湿気が高分子鎖と化学反応して分子構造を切断し、ゴムや樹脂の物性を劣化させる現象です。タイヤ、ホース、シール材、精密部品など、幅広いゴム製品では長期使用時の性能低下の主因として重要視されます。この記事では、加水分解の化学メカニズム、影響条件、材料別耐性、測定方法、対策まで詳しく解説します。
加水分解の基本メカニズム
加水分解は、主にゴム分子中のエステル結合やアミド結合、時には酸無水物結合が水分子と反応して切断される化学反応です。反応により分子鎖が短くなると、弾性が低下し硬度や寸法安定性に変化が生じます。酸性やアルカリ性の環境では反応速度が増加するため、材料選定や使用環境の管理が重要です。
化学反応式の概略
エステル結合を持つゴム(例:ポリウレタン)における加水分解は次の反応で説明できます:
R-COO-R' + H2O → R-COOH + R'-OH
このように結合が水で切断され、ゴム鎖の長さが短縮されます。結果として弾性低下や破断リスクが増加します。
加水分解が進行しやすい条件
ゴムの加水分解は以下の条件でリスクが高まります:
| 要因 | 影響 |
|---|---|
| 高湿度 | 分子鎖への水供給が増え、加水分解進行 |
| 高温 | 化学反応速度が指数関数的に増加 |
| 酸性・アルカリ性環境 | 反応速度がさらに加速 |
| 長期曝露 | 累積劣化で弾性・耐久性低下 |
ゴム種類別の加水分解耐性
ゴムの種類によって加水分解への耐性は大きく異なります。耐性の高い材料を選定することが長寿命化に直結します。以下は代表的なゴムの比較です:
| ゴム種類 | 加水分解耐性 | 特徴 |
|---|---|---|
| EPDM | ◎ | 耐候性・耐水性に優れ、加水分解に強い |
| フッ素ゴム(FKM) | ○ | 耐薬品性高いが水分接触での影響は中程度 |
| 天然ゴム(NR) | △ | 水分や湿熱により劣化しやすい |
| ポリウレタン(PU) | × | エステル結合により水分で分解しやすい |
詳ゴム材料選定に関して解説で用途別の耐性比較も詳しく紹介しています。

加水分解によるゴム性能の劣化
- 弾性低下:元の形状への復元が困難に
- 硬度変化:硬化または軟化が進行
- 寸法変化:収縮や膨張による形状不安定
- 耐摩耗性・耐久性低下:摩擦や負荷に弱くなる
実務では、劣化の進行を確認するために引張試験、伸び率測定、硬度測定が行われます。
加水分解対策と長寿命化の方法
- 耐加水分解性ゴムの使用(EPDM、FKM、シリコーンゴムなど)
- 抗加水分解添加剤(酸化防止剤・架橋剤強化)の配合
- 使用環境の湿度・水接触管理
- 高温や化学薬品への曝露を避ける設計
- 設計段階での厚み・寸法の余裕確保
これらの対策により、製品寿命の延長と安定性能維持が可能です。
長期使用事例の解説
実際の長期使用で、天然ゴムホースは数年で加水分解により弾性低下や亀裂が発生しました。一方、EPDM製の同条件ホースは10年以上問題なく使用可能です。この比較から、用途や環境条件に応じた材料選定が極めて重要であることがわかります。
よくある質問
まとめ|加水分解の理解と製品設計への活用
加水分解とは、水分と高分子鎖が反応してゴムの性能を劣化させる現象です。化学メカニズム、影響条件、材料別耐性、測定方法、対策を理解することで、製品設計時に性能最適化が可能です。タイヤ、ホース、シール材、精密部品など、幅広いゴム製品で品質維持のために加水分解知識の活用が不可欠です。

